ホスローは血潮で物語る。
雪原の持つ静けさの中、ユーノ・ホスローは己自身の夥しい血に溺れながら、見下ろす褪せた瞳を見つめていた。火山館からの刺客であり、この炎戴く雪原で己を殺す褪せ人を。担がれた悍ましき機構は肉と骨とを無骨に砕き臓腑をも撒き散らして、ユーノの肉体を完膚なきまでに壊そうとしている。ホスローが散らせる花弁に比べ、それはあまりに苦しみを喜悦に捉えていた。雪の冷たさが熱を奪う中、ユーノは最期の悔いとして弟を思い起こした。尽く無能であった弟を。ユーノの赤塗れた影を同じに望み狭間の地へ旅立ち随分と経つ、無事に生きているだろうか、円卓に座し何者にも害されずいるだろうか。ホスロー家の全てから恥部と蔑まれていた弟ではあったが、だからこそユーノは愛していた。暗澹たる血の家系、その中で何一つとして害すことのできぬ弟は、ユーノの焚く劫火を冷ます唯一だった。殺し壊し穢し慣れた己と比べ柔らかく生白い、業の熱も灯らず冷たいもの、決してユーノの脅威にならぬ愛おしき無力な手。褪せ人が己を壊す武器を振り上げるのを見る。ディアロス。兜の中、血に塗れてユーノは細く声にした。おれは死ぬ、だが弟よ。甲高い金属音が吹雪いて鼓膜を掻き毟る。おまえは無力であれ。幾重の刃がひしゃげた鎧を食い破りユーノの肉を貪り始める。ああ、ディアロス、おれは望む。振動に任せ、動かぬ手足がばたついた。この雪原の如く、おまえの手が永劫白くあると。ユーノの魂は終に壊れ霧散する。