? @shamigashu 3年以上前 編集 という#仙魚 と#池魚 のラスト(?!) ▽▽▽池上はいくつものダイスが示す数を見下ろしていた。瞬いても変わらず、遊びの終わりだった。 「そーいえば、言いました?これ植草がハマってて、先輩たちが卒業してから部内で少し流行ったんですよ。越野と彦一がやたら上手くて、福田は池上さんみたいに運悪かったなあ、アイツそのたび涙目でコート戻ってシュート打ってんすよ。あっはっは!菅平付き合わせて、抜いて打って、わるいやつですよね」 椅子が引かれ立ち上がる音がする。池上はベッドで眠り続けている魚住に目をやった。穏やかでも苦しそうでもなく、ただただ眠っている魚住を。いま失われたものを。仙道、と哀れなほど震えた声で池上は縋った。立ち上がり池上を見下ろす仙道の表情は、電球を背後にして伺いづらく、しかし部活中によく見る顔をしていた。 「なぁに言うんですか、人生一度きりですよ」 喉が渇き痛み、池上は息を詰まらせる。いちどきりだと、唸る獣だった。ベッドの傍らに膝をついた仙道は魚住の顔を眺め、獣の唸りが聞こえていない様子で深く息を吐いた。いろめきたった息だ。 「うれしいなぁ、こういうのをしあわせっていうんですね」 魚住の頬と己の頬を擦り合わせ、そうして思い出したように池上に振り返る。 「クリティカル、途中で出しましたよね。もう終わらせるかってときに、イキナリやってくんだもんな」 再び立ち上がると仙道は躊躇うことなく池上の顔を掴んだ。明かりが消え、広がる暗闇のなかで繰り返す己の呼吸だけがあった。 「オレ、優しいんで。魚住さんも言ってましたけど、なんだかんだ人を見捨てないって、そっとしておくのは信頼してるからなんですって。そーやってオレは人を引っ張っていくって、あー、また聞きたくなってきたな……キャプテンになって、魚住さんのことソウゾウして話したら、あの人かわいいこと言ってくれますよね、んなことどうでもいいか」 暗闇に光が散らつき蠢き出す。数を増して、細菌めいた震える光点が視界を埋め尽くそうとしていた。 「好きなものがなくなるのは、つらいことっていいますしね。うんうん、オレもやだなぁ」 白一色だった。眩しさの中で池上は体を引き裂かれる痛みから逃れようと目を閉じた。 「新入生のみなさま、入学おめでとうございます」 開いた目は広い体育館を映し出す。陵南高校の校章が書かれた幕が下げられ、演台では見知った顔が言葉を続けていた。あまたの人々の中で池上は立ち尽くし、辺りを伺い、その中でひときわ目立つ影を見つける。 「魚住!」 騒めきをかき分け、二回りも違うであろう影の腕引き、そうして仙道が何を残したのかを思い知らされる。怪訝な顔をする男を見上げて池上は息を落とした。無様なひとつの音を。やがて大きく笑った。人々のさざめきと、困惑した手に引かれながらも池上の笑いは止まらなかった。△△△ 2023年4月3日(月) 18:40:02 : No.105を編集
池上はいくつものダイスが示す数を見下ろしていた。瞬いても変わらず、遊びの終わりだった。
「そーいえば、言いました?これ植草がハマってて、先輩たちが卒業してから部内で少し流行ったんですよ。越野と彦一がやたら上手くて、福田は池上さんみたいに運悪かったなあ、アイツそのたび涙目でコート戻ってシュート打ってんすよ。あっはっは!菅平付き合わせて、抜いて打って、わるいやつですよね」
椅子が引かれ立ち上がる音がする。池上はベッドで眠り続けている魚住に目をやった。穏やかでも苦しそうでもなく、ただただ眠っている魚住を。いま失われたものを。仙道、と哀れなほど震えた声で池上は縋った。立ち上がり池上を見下ろす仙道の表情は、電球を背後にして伺いづらく、しかし部活中によく見る顔をしていた。
「なぁに言うんですか、人生一度きりですよ」
喉が渇き痛み、池上は息を詰まらせる。いちどきりだと、唸る獣だった。ベッドの傍らに膝をついた仙道は魚住の顔を眺め、獣の唸りが聞こえていない様子で深く息を吐いた。いろめきたった息だ。
「うれしいなぁ、こういうのをしあわせっていうんですね」
魚住の頬と己の頬を擦り合わせ、そうして思い出したように池上に振り返る。
「クリティカル、途中で出しましたよね。もう終わらせるかってときに、イキナリやってくんだもんな」
再び立ち上がると仙道は躊躇うことなく池上の顔を掴んだ。明かりが消え、広がる暗闇のなかで繰り返す己の呼吸だけがあった。
「オレ、優しいんで。魚住さんも言ってましたけど、なんだかんだ人を見捨てないって、そっとしておくのは信頼してるからなんですって。そーやってオレは人を引っ張っていくって、あー、また聞きたくなってきたな……キャプテンになって、魚住さんのことソウゾウして話したら、あの人かわいいこと言ってくれますよね、んなことどうでもいいか」
暗闇に光が散らつき蠢き出す。数を増して、細菌めいた震える光点が視界を埋め尽くそうとしていた。
「好きなものがなくなるのは、つらいことっていいますしね。うんうん、オレもやだなぁ」
白一色だった。眩しさの中で池上は体を引き裂かれる痛みから逃れようと目を閉じた。
「新入生のみなさま、入学おめでとうございます」
開いた目は広い体育館を映し出す。陵南高校の校章が書かれた幕が下げられ、演台では見知った顔が言葉を続けていた。あまたの人々の中で池上は立ち尽くし、辺りを伺い、その中でひときわ目立つ影を見つける。
「魚住!」
騒めきをかき分け、二回りも違うであろう影の腕引き、そうして仙道が何を残したのかを思い知らされる。怪訝な顔をする男を見上げて池上は息を落とした。無様なひとつの音を。やがて大きく笑った。人々のさざめきと、困惑した手に引かれながらも池上の笑いは止まらなかった。△△△