shamigashu

@shamigashu
日々の呻き
No.108
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セ部屋#池魚 の蛇足をなんこかのせたいんだけど、これは公園で遊ぶ二人

 鋭く動いた体は魚住の巨体をなんなく交わして流れるようにボールをゴールへ通して見せた。
「な、こういうふうに抜かれんだよ」
 池上は頷く魚住を見上げながら、少し休むかと続ける。バスケットゴールの置かれている小さな公園だった。並ぶ遊具の隅にただただゴールだけがあって、試合は到底できず、ゴール下でじゃれあうためだけにある。木陰にあるベンチに腰掛けて、息を落ち着けようとする魚住をみた。日に当たりわずかに赤く色づいた肌にふつふつと汗が浮き出ている。すらりとした手足は出会った時よりも筋肉がついたように思う。
「がんばってるよな」
 感心すれば、魚住は目を瞬かせてから首を振った。少しばかり長い前髪が揺れて、影になった奥には困惑し揺れる目があった。照れるなよ、と池上は笑う。
「本当のことだろ、自信もてよ」
「そうかな……ありがとう、池上くん」
 上品に笑うやつだ、と思う。同時に、まだよそよそしいなと。池上が個人的に魚住と会うようになってまだ日は浅い。田岡との対話のあと、気合を入れて練習をするようになって、池上はといえば面倒みとけと先輩に言われるがままに声をかけていた。そこから、よかったら休みにも教えようかと提案したのだ。
「くん、……池上でいいって」
 チームメイトとしてやっていくのだ、そろそろ距離を詰めたっていいころだろう。池上は無遠慮に魚住と呼びかけた。うん、と魚住が目を合わせてきて、色褪せた海がよぎった。
「言ってみろよ、ほら」
 池上の言わんとするところを察し、魚住は両指を遊ばせながらもごもごとする。こんなにデカいのにな。と思うものの、少し前に連れて行かれた屋敷を思い出して、まあこうもなるのかと納得する。店をしてると聞き、なら親を連れて行くから教えてくれと答えたところ現れた店構えを思い出す。驚いた気持ちをそのまま親に伝えれば、ああ七里ヶ浜のところかというものだから知ってるのかよと脱力した。密談にいいそうだ。ともあれそのような店の育ちのいい坊ちゃんであっても、池上にとっては同じ部活のチームメイトそれ以外の何者でもない。
「い、池上……」
 日陰の中でもわかるほどに頬を染めて呼ぶものだから、奇妙な空気が肌に触った。
「ま、そんなもんか」
 誤魔化すように立ち上がり声をかける。
「続きやろうぜ、もういいだろ」
 頷き腰を上げた魚住の見上げながらこいつが強くなればそりゃすごいだろうなと、池上はしみじみと思った。
「がんばろうぜ、魚住。田岡先生もいってたけどよ、先は長いが……三年になったら全国だ」
 魚住が目を見張る。
「聞いてたんだ」
「そら心配だったからな」
 追いかけたんだよ、と続けた池上の言葉を受けて、魚住はシャツの裾を軽く握った。
「池上、に並べるくらいディフェンスうまくなるよ」
 そして顔を上げて笑った。魚住の照れと決意の混じった緩い笑顔が池上の胸にするりと入り込む。そりゃ休んでらんねぇ、と呟いてからくすぐったい気持ちそのままに池上も笑みを返した。
 魚住が中心となった陵南バスケ部で、並んで走る自分を想像する。池上はこれから教えることがその未来を叶える一部になるのだと感じた。それはどことなく落ち着かない気持ちにさせる、しかし暖かな感情で、魚住とこのまま変わらず走れればいいなと池上は願いにも似た感情を抱いた。△△△