shamigashu

@shamigashu
日々の呻き
No.540
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間を打て…と自分にキレてしまったのでメモがてら置く#海乾

1
 乾貞治が性的な関係を持ちかけた理由は、杜撰な計算の元そこそこ高い成功率を得たからだ。であるからこそ、二人の距離はさほど変わらぬものと踏んでいたが、海堂薫は思うより誠実な人柄の持ち主だった。

(中略)

 違えようなくすべてを焼き尽くす変化が乾の傍らで燻っている。互いに益無いことであろうに、何もかもの報いがきたと言いたげに海堂は息を吐く。
「アンタが始めたことだろうが」

2
 撃ち放たれる弾丸は男の心臓を突き破り、渇いた風の吹くままにその体を倒れさせた。決闘の仲介人が死体へと駆け寄り名誉の死に十字を切る。蛇の目を持つ男は、手製の棺を磨き待つ葬儀屋へ振り返る。

(中略)

 撃ち放たれた弾丸は男の喉を突き破り、よろめいた体が開かれた棺へと倒れ込む。見上げた葬儀屋の顔は夕日に塗れて不鮮明で、その指も十字を画くことはなかった。しかし男は充足を得ていた。己の血に汚れる棺こそ、安息の足掛かり確かであるからだ。

3
 青春薫には幼少期より埋まらぬ記憶の洞がある。ついて回る不可解な空虚は薫の感情を容易く不安定なものにして、それらは自己の崩壊を予感する巨大さをもっていた。

(中略)

 鮮やかな往時のなか、見知らぬ乾の指先が秒針さながら震えて腕を滑る。海堂薫の目は覚まされた。

4
 冬日影のなか色濃く落ちる縄目の痕は乾の手首に取り憑いて久しく、海堂はその影が視界にちらつくたび気づかず息を止めていた。

(中略)

 力無く横たわる指とを結び腕を引き上げれば、乾の手首が海堂の目へと収まった。縄目の影は消え去り、余映のみが記憶の中おぼろげに浮いている。△△△